トップシークレット
並木和紗(なみきかずさ)16歳。

東京都の高校に通う普通の女子高生。
ただひとつの事実を除いてはーーー





「あ、堂園(どうぞの)総理だ」

商店街の電気屋の前に並んでいるテレビを見て、実里はそう言った。

「本当、すごいよね堂園総理って」

「…そうだね」

堂園一茂(どうぞのかずしげ)内閣総理大臣。
彼は16年間もこの国のトップに君臨し続けている。
今までの総理大臣の中で最長である。

彼は、いつも堂々たる態度で何事にものぞむ。

常に誰かの中心に座り指揮をとるが、部下を見下さない。
政策は大胆かつ現実的。
信念は曲げず、常に前を見据える。
きっとそれが堂園政権が長期間続く理由だろう。


彼を見る度、私は未だに不思議な感覚になる。
この人が私の”父親”だなんて。

内閣総理大臣である堂園一茂と私の母、並木琴子(なみきことこ)が不倫関係で、堂園一茂がまだ法務大臣のときにできた子供だそうだ。

それを告げられたのは私が中学生になってすぐの頃。
ある日突然、母が言った。

「あなたは総理大臣の娘よ」

はじめは何の冗談だと思った。
しかし母が見せてきた通帳を見ると、毎月高額のお金が定期的に振り込みされていた。
堂園一茂からだそうだ。

彼は私を認知しており、今はもう母とは会っていないが16年間かなりのお金が振り込まれているらしい。
私と母は彼から振り込まれるお金で生活していたのだ。

ずっとおかしいと思っていた。

母はパートへは出ていて稼ぎはあったが、私を小学生の頃から私立の学校へ通わすお金はあるはずがなかった。
なのに私は何不自由なく生活できている。

そういうことだったのかと聞いたときは何故か納得した。
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