小説家との禁断の恋!?
私は超ド平凡!の高校二年生の高野夢(たかのゆめ)!
でも私にだって夢はある。
それは…『小説家』になる事だ。
正直文章力は0って言ってもいい。喋っててお母さんにも
「…違うでしょ…」
…と呆れ顔で返ってくる。そりゃ、こんな女の子小説家なんて夢のまた夢。
そんなの分かってるよ…。
でもあの人に出会っちゃった。安木奏(やすぎかなで)。安木大先生と呼んでいる。
先生はいつも私にどストライクですごい面白い本!本!本!一度ファンレター…送っちゃった事ある。そしたら
「一緒に本が並ぶの楽しみです!」
もうずきゅんっ!だよね!(笑)そんな先生に淡い憧れを抱くのはやっぱり早かった。
顔も分からない。甘いものが好きなのと25歳なのと岩手県在住なのは分かってる。
…いや岩手!?こっち東京だよ…。
もうこのまま一生会えないのかな…。
先生が書いた本のイラスト展昨日だったの
に行けなかった…。もうあれは泣いて悔しかった。
だからもう!先生に振り向いてもらえる方法は小説を書いて本屋に並ぶこと!ただこれ一つなの!先生に似合う女になりたいし…何より私という存在に気付いてもらいたい。
顔も知らないのに恋をするのはおかしいのかな…?
「先生の新刊…」
「安木先生?」
「!?佐藤さんか…。」
「あっはは!いらっしゃい」
佐藤さんは正社員なんだけど結構若いと思う。21…とか?
「安木先生の新刊はこっち」
手を引いて案内してくれた。
…いやいや!こんなの普通のお客にしちゃダメだってば!
「…新刊…あ、はい!」
「……わ…」
そんな事はどうでもいいくらい舞い上がってしまった。人って興奮したら声って出ないよね。
安木大先生の新刊…
「良いの…?」
「いや、高野ちゃん客だからね(笑)いいんだよ?」
「見付けてくれてありがとう…!」
思わず本を抱きしめてしまった。佐藤さんはそれを見て顔を赤くしてあたふたしていた。
「佐藤さん?」
「あ、いや…その…レジ」
「あ、はい!」
安木先生今回どんな本なんだろ…。桜をイメージって言ってたよね…
ピッ
「あ、そういえば」
「ん?」
「佐藤さん下の名前なんだっけ」
「奏」
「そっか!安木大先生と同じ名前だ!良いなぁ…そんな偶然…」
「偶然だよ(笑)はいどーぞ!」
「ありがとうございます」
「またね!」
「はーい!」
本屋にたくさん行くようになって常連と化してしまった…!でも気にしない。だってその方がさっきみたいに安木先生のところまで連れてってもらえるから!
「ただいまー」
「あ、夢。ちょっとこっち来なさい。」
「へ?」
「新人小説なんとかのやつ。結果来てるわよ」
「嘘ぉっ!」
薄っぺらい紙にはこんな事が…
結果
落選
それはそうだよね。今回のはお世辞でも自分の口から自信作です!だなんて言えないような作品だったもん。
…安木先生が遠のいた気がした。
涙が溢れた
「審査員…見返すんだから!」
自室に篭って必死に小説を書いた。
でもいいネタなんて降ってこない。
もうだめなのかな
そんな事考えちゃダメなの分かってる。…でも、でも。これだけは諦めちゃいけない気がして。
プルルルルルル
「…?」
かかってきた電話の番号は佐藤さんからだった。
「もしもし…?」
「今すぐ来て。安木先生いる」
すぐに電話を切って飛びたした。
自信作の小説を持って。
「佐藤さんっ!」
「ひと足遅かったよ。もう帰った。」
「先生…」
「その手にあるやつは?原稿…と本か。」
「私が書いたの。この本は買いましたよって…。」
「え。まだ買ったばっか」
「もう読んだ」
「すげー…あ、原稿せっかくなら見せてよ。俺編集部してた時もあったんだ」
「う、うん。」