素直にバイバイが言えるまで
嘘をついた胸の真ん中が、痛かった。


玉ネギはとっくのとうに切り終えていたというのに、涙が止まらない。

その涙は頬を伝って流れ、あごの下で止まった。

だから素早く手の甲で拭った。


沈黙の中でした最後の味見は、しょっぱいだった。


何か違うことでも話そうと必死に言葉を探したけれど、結局、その隙間を埋めることはできなかった。


そして、気まずい空気が流れる中で、テレビの中の笑い声だけが部屋に響いていた。
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