メトロの中は、近過ぎです!
下田
朝7時

早起きして作ったおにぎりと、2泊分入ったスーツケースを玄関に運んだ時にちょうどオートロックの呼び出し音が鳴った。

「はい」
「俺」
「今、降ります」
「その前にここ開けろ」

言われるままに開けて私も出かける前の最終チェックをして玄関から出ると、大野さんが6階まで上がってきていた。

「おはようございます。すぐ行きます」

慌てて鍵をかけていると横からスーツケースを引かれる。

「…大丈夫です。自分で持てます」
「いいから、早く行くぞ」

そう言うと私のスーツケースを持ったまま大野さんは行ってしまった。

「あ、ちょっと…」

何気ないその気遣いに落ち着かなさを感じる。

そんな優しさいらないんですけど…

朝から胸が痛くなった。
今からこんな風だと、これから3日間の二人きりの出張なんて心臓がもたなさそう…
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