メトロの中は、近過ぎです!
白い部屋
*****

無機質な鉄の門に描かれているのは、色とりどりのチューリップ。
だけどそれくらいでは誤魔化されないそびえる鉄の扉。

誤魔化そうとするから余計に寂しく感じるんだと私は思っていた。

早くここから出たい。
その一心で鉄の扉を睨んでいると、右側に暖かい人の気配を感じた。

ふちがみはると君だ。

私の右手を握って一緒に座っている。

どうやらここは私が通った幼稚園らしい。

私達はほとんどお友達もいなくなった教室の前で、お母さんが迎えに来るのを待っている。
ここはいつもの定位置。
幼稚園の入口の扉がよく見えるテラスの石段。

はると君は開いてる方の手で砂に何か書いている。

ずっとそうしていたらチューリップの絵のついた鉄の扉が開いた。

お母さん。

一気に胸が暖かくなる。

「真帆~」

お母さんが手を振っている。

私はお母さんに向かって駆け出した。
足にしがみつくと、近くから女の人の声がする。

「お疲れ様です~」

見上げるとはると君のママだった。
< 261 / 309 >

この作品をシェア

pagetop