メトロの中は、近過ぎです!
お母さん達が話し始めると、はると君のところに戻り、はると君の手を引いてすべり台まで走って行った。
すべり台はお母さん達の声がまだ聞こえる範囲。

「真帆ちゃんが帰るまで自分も帰らないってきかないんですよ」
「まぁ。すみません」
「いえいえ。先日はうちの息子が真帆ちゃんにおにぎりもらったそうで、どうもありがとうございました」
「こちらこそ」

お母さんがいるだけで、すべり台はすごく楽しい遊具になる。

「そのおにぎりがとても美味しかったらしくて、同じように作ってって言われたんですけど、うちの梅干は食べないんですよ」
「そうなんですか。うちの娘も私の漬けた梅干しか食べれないですよ」
「梅干はご自分で?」
「ええ。昔から好きで…よかったら今度お持ちしましょうか?」
「まぁ、ありがとうございます」

はると君も私以上に夢中になってすべっている。
ただそれだけで楽しかった。

「真帆~。帰るよ」
「イヤー。まだ帰らない」
「はるとも、そろそろ帰らないと…」
「えー」

お母さんたちが笑っている。
はると君も嬉しそうに笑っている。

私も大声で笑っていた。



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