メトロの中は、近過ぎです!
「いや~、今日は本当にイケメン運がいい日です」

会社に戻ってる車内で浮かれ気味の私を、課代が目を細め半笑いで馬鹿にして見ている。
そんなの全然気になりませんけど!

「戻りました~」

営業3課に戻ると、ほとんど誰もいなかった。

戸田君が私を見つけて、グングン近づいてくる。

「な、なに?」

思わずのけ反りながら聞くと、「あっち」ってミーティングルームの方を指さしている。

ガラス張りのミーティングルームの中には伊藤チーフと沙也香ちゃんがいる。

でも険悪なムード。

沙也香ちゃんはうつむいたままで、チーフはずっと何か話している。

沙也香ちゃん、やらかしたな。

遅れて入ってきた大野課代も、戸田君と私の視線を追って
「どうした?」と聞いてきた。

「なんか沙也香さんが、納期が間に合わないのを先方に伝えてなかったらしくて…
さっき伊藤さんが工場とかクライアントさんとかに電話しまくってました」

私も課代もハッと戸田君を見た。

「ついさっきなんとか解決したみたいですけど、クライアントさんが怒っていて…」

沙也香ちゃんのことが心配で、戸田君も仕事にならなかったんだろう。手に持ったファイルが折れ曲がっている。

戸田君の肩をたたいてニッコリ笑って首を縦に振った。

任せといて。

そのまま給湯室に向かいコーヒーを3つ淹れた。


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