メトロの中は、近過ぎです!
私の肩に大野さんが顔をうずめる。

首にかかる息が熱い。

思わずビクッと反応した。

突然のことに頭がついていけないんですけど…

私、なんで抱きしめられてるの?

大野さんの胸を押しながら、なんとかこの状況から抜け出ようと頑張ってみる。

「煽んなよ」

唇が耳にふれそうな距離で囁かれた。

「あ、煽ってません」

声が震えている。

大野さんはしばらくそのままの体制から動かなかった。
私は押すのを諦めて、泣くのだけはやめようと上を見た。

お互い何も話さず、動かず、しばらく静かな時間が流れた。


それは突然だった。

いきなり腕から解放されると、

「もう寝る」

大野さんは寝室へ行き、さっさとベッドに潜り込んでしまった。

私は解放された安堵感と、突然離れていった熱に放心状態。

今の行動は何だったの?

考えると変に意識してしまいそうで…
だから今のは考えないようにした。
なかったことにしようと決めた。

だから片付けを淡々とこなし、いざ寝ようとするときに気付いた。

私のベッドが占領されている…

オフホワイトと赤のチェックの布団カバーに包まれているのが全く似合わない大野さんを睨みつけて、その横に畳んでおいた、布団をリビングに敷いて横になった。

案の定、すぐには寝付けない。

さっきの熱を思い出しては、寝返りを打つ状態がしばらく続いた。
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