侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?

エセルsaido

アンディーと会ったのは、乗馬レース以来です。

この一ケ月、私から二度手紙を送りましたが、彼からは型通りの味気ない返事が来ただけでした。
社交界の噂話では、私とレイモンド様は熱烈に愛し合っているらしいですから、アンディーが私に騙されたと感じ、不信感を抱いたとしても不思議ではありません。
実際に彼がどう思っているかは全く分からないのですが、関係がギクシャクしているのは確かです。
来てくれて本当に嬉しい。

薔薇の花束は以前レイモンド様の白薔薇を拒絶した手前、彼の前で受け取るのは心苦しかったのですが、まああの後、香りの無い花束は全て受け取っていますし、これ以上アンディーと気まずくなるのは嫌でしたから、あれこれ考えずフランクに受け取りました。
それにとても可愛らしい花束ですし。

レイモンド様には後でちゃんと謝らないと。

うっ、オーケストラの演奏がボリュームアップしました。
ダンスが始まるようです……。

見世物、いえ、衆人環視のもと新郎新婦が2人で踊るファーストダンスの時間です。
はぁぁ、心の中で嘆息しつつ、入口に立っているリードマンに合図して、バラの花束を渡します。

そしてレイモンド様にエスコートされ、フロアのド真ん中へ。

途中彼には、僕に恥をかかせるなよ……と、居丈高な一言を耳に注ぎ込まれました。
ただでさえガッチガチだっていうのに、追い打ちかけて金縛りにする気ですか? 
それに、あなたが私の耳に唇近付けた時の令嬢方の射る様な視線て言ったら、凄腕のヒットマンなみですよ。
グサっ、痛っ! また刺さった!

それでもなんとかアヒルはアヒルなりに出来得る限りの優雅さで、くるっとふわっとターンを決めて、3曲踊り切りましたとさ。
めでたしめでたし クワックワッ
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