侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
夫の表情に安堵しながらも、一方で申し訳なく思っていたのは事実です。

「あの……男の子じゃないから、がっかりしたんじゃない?」

遠慮がちに声をかけると、
「何言ってるんだ……」

レイの顔付きが一瞬で引き締まりました。

彼はサブリナを助産師さんに預けると、ベッドの端に座りました。

「元気に生まれてくれたら、それに君が無事なら他には何も望まないって言ったろう? だいいちこんなに可愛い娘、神様が男の子と取り替えてくれるって言っても、放すもんか」

私の顔を上から見つめ微笑する夫。その瞳は、少し潤んでいます。

「エセルありがとう、愛してる……」

優しく髪を撫でながら囁かれ、一瞬間をおいて、触れるように口付けが落とされる。

レイ……

安心した私はいとも簡単に睡魔に操られ、瞼が重くて堪らない。

途切れてゆく意識の中、額や頬にも口付けられたような。

幸福感に満たされながら、私の意識はコトリと沼に落ちたのでした。
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