侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「こ、侯爵様、お散歩に参りましょうか」

レイモンド様の描いたシナリオ通りに踊らされた感ありありですが、きっちり話をつけて曖昧な関係を断ち切らないと、今後心臓が持ちそうにありません。

私の言葉に鼻先で笑い腕は離してくれましたが、代わりにカチャリ、見えないリードで繋がれました。

そしてどのタイミングから見ていたのかは知りませんが、あちらこちらから飛んで来る、ジェラシービームと嘲笑交じりのひそひそ声。

「お聞きになりまして? お散歩に参りましょうですって」

「ええ、ホントはしたなくてイヤですわねぇ」

「必死に頑張っていらっしゃるんですもの、そんな風に言ってはお可哀想よ」

「でもレイモンド様狙いなんて、身の程知らず過ぎて笑えません事?」

どうして私がなりふり構わず、レイモンド様を狙ってるみたいなストーリーで纏まっちゃってるのよー!! 
ハッキリ言って、こっちが迷惑してるんだってー!! 
とは言うものの、「散歩に参りましょう」って言ったのは事実ですし、ここは涙を呑んで撤退。

なんら悪びれもせず、隣で微笑む傲慢侯爵。
お前のせいだっつうの!!

そしてテントを出るや、「逃げるなよ!」とでも言わんばかりに強引に腕を組まされ、お散歩スタート。
言いたい事は言っとかなきゃ!
「侯爵様、わたくしの日常に波風を立てないで下さい。本当に困るんです! さっきだってあなたを慕うご令嬢方に、玉の輿を狙う成金娘みたいに陰口言われてましたし」

「ははは、それは気の毒だな、かわいそうに」

その言い方、あなた全然思ってないでしょー!!

「とにかく責任なんて一グラムたりとも取って下さらなくて結構ですから、わたくしには金輪際関わらないで下さい! それから、あの夜の事も翌朝の事も、心の奥の更に奥に仕舞い込んで、責任持ってお墓の中まで持って行って下さいませ!」

強い口調で言い過ぎたかもしれません。
お顔は見ていませんが、レイモンド様の腕や体が一瞬硬直したような気がしました。
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