御曹司のとろ甘な独占愛
「伯睿と将来を誓い合っているのは私の方なの。――人のものを取るのは、やめてもらえる?」

 怡菲は満面の笑みで小首を傾げ、両手をパチンと合わせた。
 一花は唖然として彼女を見つめる。

 一花が何か言い返す前に、ネームプレートに刻印された漢字を見たらしい怡菲が、「あらあら? 朝顔ちゃんのお名前って一花っていうの?」と驚いたように目を丸めた。

「たった一輪の花なんて……可哀想なお名前。ますます諺がよくお似合いね」

 憐れむような視線に、流石に怒りが湧いてきた。

 “一花”は、一つの花の命も大切にできる心優しい子に育ちますように、と両親と祖父母が一生懸命考えて命名してくれた大切な名前だ。この名前を勿論気に入っているし、誇りさえ覚えている。

 それを、こんな風に愚弄されるなんて。

「……あなたに、私の名前をとやかく言われる筋合いはありません」

 一花は怡菲を挑戦的に睨み返したかったが、そんな元気はなかった。少しでも力を抜けば大粒の涙がこぼれそうになる。それを必死で堪えながら、小さく唇を噛んだ。
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