妄想は甘くない
「……どういうこと? ……大神さんは納得したの、それ」
“納得”を問われると実際のところ疑問があると、自分でも薄々感付いて眉間を寄せた。
「……わからないけど、わたしにとっては、良い想い出になった」
「……何それ? 宇佐美だけ良い想い出って? …………もしかして、なんかあったんじゃないの……」
「…………」
気まずく押し黙ってしまうと、近藤が核心を突く。
「……したの? 彼と」
賑わう食堂の騒めきの中でもわたしには、はっきりと届いた。
真っ直ぐな視線に、これ以上誤魔化せないと小さく首を縦に振る。
彼女はその顔に改めて驚きを表したかと思うと、背もたれに身体を預けて溜息を漏らした。
いつかの様に額に左手を充てがい、瞼を伏せた。
「何かあったのかとは思ってたけど……」
箸を置いてしまった近藤の背後の通路は、いつも通り人の行き来が激しい。
暫し考え込むように黙った後、口を開いた。
「……ズルいよね、あんたって何ていうか……相手の気持ちは無視なんだ。確かめもせずにひとりで決めちゃうんだ」
放たれた言葉は胸に鋭く刺さって次第に全身に広がるように痛み、目を見張った。