僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい
「今日は持久走を行う。
前の人とチームになって、1㎞のタイムを計り合ってくれ。
渡未は記録を書いてくれるか?」
そう言って渡されたバインダーと紙を返事して受け取る。
スタートラインに立って準備体操をする1人の男子が何気なく言った。
「渡未走らなくていいとか、いいよなー。記録だけとか楽じゃん」
その言葉に怒りを覚える。
彼はこの高校で知り合ったばかりで、ただのクラスメイトという関係でしかない。
だから、不本意にそう言ってしまうことは分かる。
けれど、どうしても思ってしまう。
じゃあ、代わってよ。
その言葉を喉にしまって笑って返す。昔から何度も言われてきたから、その怒りが態度に出るほど子供ではない。
「僕はここで応援頑張るから、走るの頑張って」
自己紹介の時に、自分のことを『僕』と呼ぶことはもう知っているのでクラスのみんなは驚かない。