軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 四十歳で神殿の長として君臨するフェンリルは長い灰色の髪を下ろし、服装はほかの神官と同じ白の長衣を着ている。違うところといえば、大神官だけがかぶることを許される獅子の刺繍とガーネットの宝石があしらわれたスクフィヤと呼ばれる帽子くらいだろう。


「参りましょう」


先導するように歩き出すフェンリルの後を無言でついていく。この人にだけは絶対に知られてはいけないと、目前にある背を緊張の面持ちで見つめた。


(あの人の目覚めて、部屋を出たりしたらどうしよう。私が帰るまで外に出ないように、置手紙でも残してくればよかったわ) 


 聖女の部屋は神聖な場所という概念があるため、聖女の身の回りの世話をする女性小務官ですら禊をして身を清めなければ入ることを許されない。

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