軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「まだ眠そうだな、目がトロンとしている」

「うん……ここは、夢?」


 優しく髪を梳かれて、瞼に唇がそっと触れた。


 彼の指先が、唇が、自分を愛おしいと告げてくる。それに気づくたび、杯になみなみ酒を注がれたときのように、心が酔いしれるほど満たされるのだ。


「ふっ、現実との境がわからないとは……さては、夢でも俺の姿を見たのか?」


(夢でも……どうだろう)


 目が覚めた途端に、泡沫のように夢の記憶は弾けて消えてしまった。でも、確かな幸福感がこの胸に残っている。


 だからきっと、彼が夢の中でも自分を抱いてくれていたのだろうと思った。


「そう、かも」


 だんだん意識がハッキリとしてきて、しっかりと目を開ける。横になったまま愛しい夫の顔をまじまじと見つめて、幸せな気分に浸った。


(本当に息を呑むくらい、綺麗な顔よね)


 見惚れて凝視していると、レイヴンの眉尻が下がっていく。


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