軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「目を開けて、私がわかりますか?」


 恐る恐るその頬に指先で触れてみる。


「なんて、冷たいの……」


 まるで陶器人形に触れているかのように、彼から体温を感じられなかった。亡くなってしまったのだと、セレアは絶望的な気持ちでその頬から手を放す。


(どこの国の方かしら、体だけでも祖国に帰してあげたい)


 このカエトローグ島は神の住まう絶対不可侵の国と呼ばれ、他国とは一線を置いている。貿易もないため、島の外の情報は一切入ってこないのだ。 


 彼の黒い軍服に、なにか素性のわかるものがないかと目を向ける。肩から前胸部にかけて黄金の飾緒と赤い勲章がかけられており、身分が高さがうかがえた。

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