空と海と(仮)
「おかのー。」
ビクッと肩が震える。
ソロリと見るともう居ないと思っていた。数学担当の田辺先生。
「……先生、おはようございます。」
にこりと誤魔化してみる。
「またお前は遅刻か。」
ペシンと先生が持っていたノートで叩かれる。
「すみません」
しゅんとしてみれば、上からため息が聞こえる。
「まぁ、お前はいいや。
今日やった小テスト机の上に置いてあるから、昼までに持ってこいよ。」
そう言ってヒラヒラと手を振りながら先生は教室を後にした。
クラスメイトに挨拶をしながら席に着く。
前の席の千恵(チエ)ちゃんが振り向く。
「翠ちゃんおはよ。相変わらずお寝坊さんだね」
笑顔がとても可愛い素敵な子だ。
「千恵ちゃんおはよ」
千恵ちゃんに笑顔を返す。
「翠!ニュース、ニュース!」
元気イッパイの由紀(ユキ)ちゃんはトレードマークのポニーテールを揺らしながらピョンピョンしている。
「おはよ、由紀ちゃん。」
「おはよ!それよりも、ニュース!」
何故か興奮してる由紀ちゃんに、千恵ちゃんと顔を見合わせて首を傾げる。
「安達君が!保健室の先生とデキてるらしの!」
バタバタしてる由紀ちゃん。
わぁ。安達くんすごいな。
「さっき後輩が言ってたんだけど、授業サボって保健室に入っていくとこ見たって!」
キャー。とショックなのかなんなのか分からないテンションで由紀ちゃんがはしゃいでる。
ん?さっき?
「あぁ、それ多分勘違いだよ。」
私の一言に目をこれでもかと開いてピタリと止まる。
……結構怖い
「多分、バスケ中にボールが当たったからその手当てしに行ってるだけだよ」
少し、後ろに引きながら話す私をジーっと見る由紀ちゃん。
「来るときその現場に遭遇したから」
ね?とニコッと笑うと、納得したのか
「なーんだ。そうなんだ。」
と言って隣の席にドスンと座った。