鬼の生き様

丁稚奉公(下)


 時は流れて嘉永四年(1851年)。
歳三は十七歳になっていた。

 上野いとう松坂屋呉服店から逃げ帰ってきて以来、歳三は丑の日になれば牛革草の刈り取りは意欲的に取り組んでいるのだが、歳三が携わる日には、的確な指揮の元、牛革草採取は早くに終わった。

 しかし素行は悪かった。
喧嘩に明け暮れる毎日で、傷を作らない日がなかった。


 その頃には、“バラガキ”というあだ名までつくほどの悪童となっていた。
バラガキとは、眉目秀麗な綺麗な顔立ちには似合わず、触ると怪我をするイバラのような乱暴な少年という意である。


「全くおめえって奴ァ、喧嘩喧嘩と懲りない奴だな」


喜六も頭を悩ましていた。
石田村の歳三といえば、お大尽の暴れん坊だと土方の家名に傷がついてしまう。

 いつの世も、強い男に女は弱いもので、涼しげな表情に歳三を慕う女も多く、喧嘩の大半は、女をとった、とっていない、と身に覚えのない喧嘩までも引き受ける日々。


「歳三!お前はいい加減身を弁えろ!」


喜六の我慢も限界に感じていた。

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