残り100日の私と大好きな君
「……これは、もうほぼ失明かな。」

「………………」

「脳の腫瘍を切る時に、目の神経を傷つけてしまったのかもしれない。」

しつ…めい……?

もう、私、一生目が見えないってこと…?

数分前に奏汰くんが先生を連れてきてくれて、診察をしてもらった。

私が目覚めてからまだ30分もしていない。

…………まだ寝起きの私のボーッとした脳に、いきなり弾丸のような衝撃が打ち込まれた。

「…すまない。」

そう言った先生の声はひどく悲しそうで、少し震えていた。

私だってショックだった。

けど、それ以上に、私のわがままを聞いて頑張ってくれたせいで、私の視力を奪うことになってしまったという先生の方が傷ついているのかもしれない。

「……せんせ………………他の、所は?」

「…………他の所は全て取り除ける範囲はほぼ取り除いたよ。」

「…なら、良かった…………何もしないで死ぬより、頑張った方が……カッコイイ…から……」

私がそう言うと今度は奏汰くんが、ほぼ涙声で私の名前を呼んだあと、ギュッと手を握ってくれた。

目は見えなくなってしまった。

けど、私はハッキリ奏汰くんのあの優しい笑顔を覚えているし、今も奏汰くんの温かさを感じる。

どうせ、これだけがんばったけど、あとの短い人生だ。

そんなこと、手術前からわかっていた。

なら、少しくらい目の見えない体験をするのも、いいかな……




……………………なんて、思えるわけないじゃん…

目が見えない。

奏汰くんの表情も見れない。

こんなの、悔しくないわけないじゃん…

あとから、誰もいない時、こっそり泣こう。

まあ、涙腺がちゃんと機能してるかもわからないんだけどね…
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