それもまた一つの選択
こーちゃん事、幸平と病院を退院して3日目。
私は…私は。
夕方だというのにパジャマ。
昨日は一睡もしていなかった。
フラフラになりながら授乳、でも出が悪いからミルクを足す。
おむつ替え。
寝そう!!と思ってベビーベッドに置いたら…。
泣く。
抱っこ。
寝そう、私も寝たい!!
置く、泣く、抱っこ。
授乳、おむつ替え。

…誰か助けて!!

トキさん…
高橋さん…

言えるわけないー!!

二人とも、昼間は大学、夜は今井商事で今後の修行。
帰ってくるのも夜中だし。
早朝からいないし。

ただ。
いつもどちらかが作ってくれただろう1日分の食事がいつも冷蔵庫の中にある。
一体、いつ作っているんだろう。
寝てないはずなのに、気が付かない私。
あれ、これって寝ているのかも。

またこーちゃんがぐずぐず言いだした。
辛い、可愛いとは思えない。
どっちにも似てないぞー。
こーちゃん。

ぐずるこーちゃんを抱っこしてあやす。
そして思う事は。
好きな人と結婚出来ても幸せな事ってほんの一握りじゃないだろうか。
トキさんと一緒に過ごせたこの半年は幸せだった。
1日のうちで一緒にいられることは僅かでも。
幸せだった。

今は…辛い。
こーちゃんのお世話に明け暮れ、トキさんはほとんど家にいない。
目の前にいる本当に小さなこーちゃんが悪いわけじゃない。
こーちゃんが生まれる事を心待ちにしていたのにいざ生まれたら。
凄く気分が落ち込んで何もする気がしない。
実家に帰ればよかったのかもしれない。
でも…あのお母様と少しずつ雪解けしているとはいえ、一緒に過ごすのは嫌だ。

これが私の選んだ道。
私がもっと大人になって上手く甘えられたらいいのかもしれない。
でも…無理なの。
まだまだ子供なんだと思う、自分でもそれは痛いくらいわかっている。

「あ…」

こーちゃんの小さな頬に私の涙が一粒。

ごめんね、こんなママでごめんなさい。
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