それもまた一つの選択
中々気分が浮上しないまま、時は過ぎた。
気がつけば、季節は夏に差し掛かろうとしていた。

こーちゃんも少しは大きくなり、少しずつ表情が豊かになってきた気がする。

今日は梅雨の中休みみたいで久々に晴れたのでベビーカーを押して買い物。
いつもより少しだけ遠くに行ってみた。

トキさんが少しでもストレス発散出来れば、と言って生活費以外のお金を私にくれたので、デパートへ。
自分のものは特に要らない。
こーちゃんのものを買おうと思って子供服売り場へ。

あー、可愛い帽子がある!
そう思って手を伸ばした時。
反対からも手が伸びてきて触れそうになり思わず

「ごめんなさい」

そう謝って顔を見た瞬間、私は目を丸くする。

「平野さん…」

しかもそのお腹!
大きくて…。
その隣には、トキさんよりも更に年上の男性。

柏原君が亡くなったのは去年のクリスマス。
それからまだ半年くらいしか経ってない。
…お腹大きい。
しかも隣には知らない男性。

二股交際?

「えっ…今井さん?」

平野さんは平野さんで私を見て驚いていた。

「赤ちゃん産まれたの?」

そしてすぐに平野さんは男性を見つめて

「そーちゃんは知ってたの?」

その男性は平野さんを見つめて苦笑いしながら頷く。

私がお聞きしたい!

なぜ、私の知らない方がそれを知ってるの?

「藤野君から聞いてる」

え、トキさんの知り合い?

…今すぐトキさんを呼び出して事情聴取したい気分。

「真由、お昼だし3人…いや4人でお昼でも食べる?」

ベビーカーのこーちゃんを見て、そーちゃんと呼ばれたその男性は微笑んだ。
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