それもまた一つの選択
「遥は純粋だよね」

高橋さんと大笑いしていたトキさんはあの、私が大好きな優しくて少し控えめな笑みを私に向ける。

「遥は閉鎖的な場所でずっと過ごしてきて…恋することも結局俺しか知らない。
だから余計に平野さんのことも門真さんのこともわからないと思う。
世の中の恋愛なんていろんなパターンがある。恋愛だけじゃない、家族の在り方も。
平野さんと門真さんは居なくなった人にずっとしがみつくよりも現実的な方法を取ったまでだよ」

トキさんの目は穏やかそうに見えて少しだけ冷たい光を宿わせている。

「ただ、俺としては遥にはこのまま変わらずいて欲しい」

…それじゃあ私は子供のままじゃないか。

「俺はどんどんと変わってしまう。
嫌でも留まることを許されない。だからせめて遥といるときだけは…。
出会った時の気持ちを持てるように…それを思い出せるように遥は変わって欲しくない」

高橋さんはこーちゃんを抱っこしながら頷いていた。

「トキさんがそんなに変わるとは思えない」

思いたくない。

「…それはこの空間に遥と一緒にいるからだよ。
遥がいない空間じゃそんな自由はない」

自由って…?

見上げたトキさんの瞳は私の知らないトキさんだった。

その意味を私はこの後、痛いほど知ることになる。
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