それもまた一つの選択
10歳年上の男の人ってあんな感じなのかな。
トキさんなら、どう言うだろう?
…柏原君、子供の事を知らずに死んじゃったんだ。

「遥、何泣いてるの?」

夕暮れ時、すやすやと眠るこーちゃんの隣で座っていた。
目からいっぱい涙が流れて。
何だかわからない感情が溢れてきて止まらない。

いつの間にかトキさんがリビングにいた。
私の隣でしゃがみ込んで私を見つめている。

「…おかえり」

そう言うのが精一杯。

「また幸平の事で苦しくなったの?」

トキさんの手が私の頬を撫でた。
首を横に振る私。
違う。

「トキさんは平野さんが妊娠している事、知ってる?」

一瞬、トキさんの頬が動いた。
ゆっくりとその口を動かす。

「聞いている」

ただ、それ以降は黙ってしまった。
沈黙と共に部屋も暗闇に包まれる。

「何してるの、お前ら?」

その瞬間、部屋の明かりが点いた。

「…喧嘩?」

高橋さんがふにゃふにゃ言いだしたこーちゃんを抱っこすると

「パパとママが仲良くないと嫌だよなー、2号~♪」

高橋さんはこーちゃんに2号というあだ名を付けた。
自分がこーへい1号らしい。

「喧嘩なんてしてないよ」

トキさんは少し機嫌悪そうに言うと

「…誰から聞いたの、その話」

私には知らせたくなかったかのようにトキさんは聞く。

「平野さん」

「…連絡取り合ってたっけ?」

「どうしてそんな風に言うの?」

初めて、トキさんにムカついた。

「遥がその事を知れば…絶対に傷つくと思うから」

さっきのムカつきが一瞬で消えた。

「お前がどういう事で落ち込むか、とか…この3年でよく知っている。
知っているからこそ、黙っていた。
不義理だと思っても二人の結婚式には行かなかった。
それは遥に気づかれたくないから、幸平も生まれて落ち着かないのもあったから」

この言葉を聞いた時、何だかトキさんが自分よりずっと大人になっていて遠くに感じた。
2歳しか離れていないのに…私はトキさんの子供か、と内心思っていた。

「…もし門真さんと同じ立場ならどうする?」

その質問にトキさんと高橋さんが同時に

「「同じことをする」」

即答だった。

「だって門真さんは平野さんの事、嫌いではなかったし。
むしろ好感持ってたと思うし」

「トキさん、それってありなの?」

「そりゃ、ありだろ。
平野さんはどうかわからないけど…門真さんからすれば案外ラッキーな事かも」

なぜ!!!???

「だから、門真さんはなんとなーく平野さんの事は好きだったって事。
拓海君がいたから遠慮してた部分があったけど、もし拓海君と付き合ってなかったら即、アプローチ掛けてたと思うし」

「はあ?」

思わず出た言葉に高橋さんがこーちゃんをあやしながら大笑いしていた。


…ムカつく―!!
< 118 / 119 >

この作品をシェア

pagetop