それもまた一つの選択

都貴の過去と高校生活と

本当にみじめな幼少期だったと思う。

ずっと働き続けている母さん。
ずっと家にいない親父。
たまに帰って来ては母さんに金の無心を続けていた。

常にお腹を空かせている弟と妹の為に小学生の時からご飯を作っていた。
だから普通の食事位は大抵のものは作る事が出来る。

母さんは俺にいつも食費を預けていた。
少ないその中から少しずつ節約して現金を貯めていた。
貯まったら母さんに返そうと思って。

なのにあの親父は。
その金さえも見つけ出し、いとも簡単にギャンブルに使ってしまった。
1円の利益も上げることなく。

それが小学5年の時。

「母さん、あんな奴と別れたら?」

本当に悔しくてそう言った。
あまりにも淡々と言ったので母さんは恐ろしかった、と高校に入ってから聞いた。

その後、離婚が成立して更に生活は厳しくなった。
けれど、あの親父が帰って来ないというのは幸せだった。

中学1年の時にコツコツ貯めた金が100万近くになったので母さんに返す、と言ったら母さん、ビックリしすぎて倒れそうになっていた。

「それは都貴が貯めたお金だから、都貴が持ってて」

そう言われたので色々と考えて買ったのがパソコン。
その当時、持っている人なんて周りではほとんどいなかったし、持っていてもゲームに使っているとか。
それなら自分でゲーム作りたいな、なんて思ってプログラミングの勉強をした。
それが中学1年の終わり。

1歳年下の妹と5歳年下の弟は俺の後ばかり追いかけてくるような、そんな2人なのできっと高校に入ってもバイト出来ない。
何か良い方法はないかなって思ったら。
自分の作ったゲームを売り出す。
とある小さなゲーム会社に自分の作ったゲームを持ち込んだら…当たった。
それで資金を作り、15歳で自分の会社を作った。

それからはゲームだけじゃなく、企業のシステムも作ったり。
色々と仕事が増えた。

高校は公立高校に行こうとしたが、一芸一能を持つ子供を受け入れてくれる高校がココ。
学費も半分は学校が負担してくれる。
何より、自分のしている活動を認めてくれる。
学費は元々母さんに出してもらう事を考えていなかったし、その時にはすでに余裕で3年分支払える金を持っていたのもあった。

だからあの高校にいるんだ、今。
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