それもまた一つの選択
夏休みも半ばに差し掛かった時。

トキさんは引っ越しをした。

しかも…賃貸じゃない。



うわぁ!
広い部屋!

…といっても。
自分の家はもっと広いけど。

でも、ここ。
高校生が一人で住む場所じゃないよね。

「俺の部屋までありがとう」

「これで少しは勉強、はかどるだろ?」

隣の部屋までトキさんが買い取り、そこを高橋さんの部屋とした。

但し!!

入口はトキさんの部屋。

隣の入り口は使わない。

中を一部改装し、ドアで行き来出来るようにしてある。

「これでアリバイ成立。
俺たちは二人で住んでいる、この部屋に」

トキさんは私に言い聞かせるように言った。

頷くしかない。

「今日のお昼は俺がご飯作ってやるー!!」

高橋さんが豪快に笑った。

大して期待していなかったのに高橋さんの作る料理は絶品だった!

料理人が作る我が家の方が負けているかも。

「トキさんが実家を離れても食べるものには困らなさそうだから良かった」

なんて私が呟くと二人はお腹を抱えて笑っていた。

何で?正論じゃない?

「言っておくが、俺もちゃんと料理はするからな」

笑いながらトキさんが言う。

「…実家にいたころはずっと俺が作っていたからな」

トキさんの目が急に悲しいやら怒りやら色んな色を見せる。

「よーちゃんに本当の事を言ったらどう?」

本当の事?

トキさんの顔をじっと見つめると大きくため息をついてトキさんは私を見つめた。

「…聞きたい?俺の話」

そりゃもちろん!!

何度も頷いた。
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