それもまた一つの選択

2学期が始まり、そして… - 遥 -

トキさんが会見をした日。
私はその日が2学期の始まりだった。
3年は早く卒業するから、始業式後すぐに授業がある。
1・2年は帰ってしまった。

まだ暑い夏。
体調はあまり良くない。



「どうしたの?」

顔を伏せていたからと思うけれど、同じクラスの平野さんが声を掛けてくれた。

「あ…ちょっと調子が悪くて」

本当に調子が悪い。
悪阻だ。

「大丈夫?一緒に保健室に行く?」

「うん、ありがとう」

一緒に保健室に向かう途中、柏原君にも会った。

「顔色悪いよ?」

「うん、ちょっと…」

心配そうに見つめる柏原君。
本当にそんな目で見つめられるとなんだか罪悪感が。

二人とも、ごめんなさい。

「失礼します」

保健室に入ると植田先生がやっぱり、という顔をしている。

「平野さん、次の授業から今井さんは保健室で過ごしてもらうわね。
先生に伝えておいて欲しいの」

植田先生はそう言うとベッドの布団を敷き直した。

「…今井さん、そんなに状態が悪いのですか?」

平野さんは心配そうに私と植田先生の顔を交互に見る。

「原因不明だけど免疫力の低下で体育は禁止。
授業も気分が悪くなったら保健室で、という事が診断書で出ているの。
申し訳ないけど、平野さん、今井さんとまだ仲が良いと思うから今後も何かあったらよろしくね」

植田先生はうまく交わして更に平野さんを味方に付けるような事を言うと平野さんは目を輝かせて

「もちろんです!!」

平野さんの親切心を利用した感じで何とも後味が悪い。

「じゃあ、今井さん、ゆっくりしてね」

「あ…ありがとう」

平野さんは手を何度も振って出て行った。
< 97 / 119 >

この作品をシェア

pagetop