囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
触れていく
・・・あの星空の下で抱き締められたあと…
何事もなかったかのように

「帰ろうか…寒そうだな…これ巻くか?」

そういって彰貴さんは私にブランケットを巻き付けると抱きかかえるようにして車に戻った

その頃から私の心が騒がしい

…気付いてしまったからだ

朝ご飯を食べる時の嬉しそうな表情が好き

珈琲を味わうときにほんの少し唇が右側だけ上がるのも好き

毎晩抱き締められるその強い腕も好き

冷たそうなのに時々や優しい目で見てくれるところが…好き

そう、私は彰貴さんを好きになってしまったのだ

条件でそうならないと決まっているのに

傍にいたい…

偽りの関係が終われば
当然私たちは婚約を解消し離れ離れになるのだ

だから言えない

「前の人はオレの恋人になりたいと言い出した…好きにもなっていないし、それは困ると言ったら…あんな風に逆上されたんだ
単なる恋人のフリなのに…」

「そうだったんですね…」

だから『サイテー』か…

「ああ…一族の掟で、結婚しないと会社の跡継ぎになることも出来なくなるし…
それに母さんを安心させてやれないから」

彰貴さんがそういうのなら私は立派に婚約者のフリをして
時期が過ぎたなら綺麗に関係を清算しよう
彼が偽りの恋人を求めたわけは

会社を継ぐため、そして…お母様を安心させてあげるため…らしい

それなら本物の恋人を作ればよさそうなのに

「あいにく今は仕事が楽しくってね…女性を構っている時間もないからな」


そうこうしているうちに第二関門の親戚へのお披露目の日になった
この日のために彰貴さんが私にドレスや靴など一式をブライダルショップに頼んであり

当日は何やら顔や身体や髪をいじくられながら
綺麗に磨かれて…ドレスに袖を通した

真っ白なサテンのドレスの上にオレンジ色のオーガンジー

まるで夕陽のようなグラデーションが胸元の濃い朱色から足元の白色にかけて掛かっている

ワンショルダーで、丈は膝丈

合わせた靴は艶消しのゴールドでストラップで止めるタイプだったのでヒールでもふらつき難い

「仕上げにこちらを」

そういわれて最後に胸元を飾ったのは
花のモチーフのゴールドのネックレスと
耳元に透明なドームに閉じ込められた白い花が揺れるイヤリングだった

「可愛らしい!」

お店の方がそんな風に言ってくれて鏡を見ると...

冴えない容姿ながらも似合っていて…なかなか自分でも似合っているように見えた



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