囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
彰貴さんがサロンまで迎えに来てくれて

「似合ってる」

小さく目を細めて呟くから
戸惑ってしまう…

「有り難うございます…」

けれど柔らかい視線で何となくそれは本音なのかなと思えた

エスコートされてやってきたのは
ホテルの上階に設けられたロイヤルスイートルーム

てっきりバンケットルームかと思っていたのに


「親戚だけの集まりだし…貸しきりに出来てそのまま別室で休むことも出来るしね…しかもあの部屋は辻堂の関係者しか泊まれない部屋だし気兼ねなく使える」

そう聞いて納得した
辻堂家はこのホテルの経営者一族なのだから…

完全なるプライベートな空間だと言うことだろう

「来るのは父と母と祖母、祖父、それから父の兄弟夫婦と子ども…従兄弟たちだね…大体はグループで働いてる」

彰貴さんのお父様は5人兄弟、弟が2人と妹が2人

それぞれが結婚しているから…8名の叔父叔母がいて
更に従兄弟と言うわけだ

「普通は親戚の集まりなんて堅苦しくは無いんだろうけど…実はこの集まりが何より堅苦しいんだ…けれどここを乗り切ればだいぶ状況は変わるから…頼むよ?」

「はい、心得ました」

そんな風に昨日言われて居たので

私はしっかり彰貴さんの腕に入り口からすがるように付いていき婚約者らしく振る舞う

「彰貴こんばんは…あらあら、これが噂の?」

上の妹…叔母のサエコさんが私を訝しげに見る
大きな花柄のワンピースに身を包みとても派手だが
顔立ちも派手で違和感がない

事前の説明によると
あまり彰貴さんに好意を抱いておらずむしろ自分の息子をグループのトップに推薦したがるようで
様々な難癖をつける可能性があるらしい

サエコさんが全身を舐めるように見てニイッと赤い唇を横に引いた

「趣味が変わったの?彰貴…でも随分、健康そうね?」

(ふくよかだからと嫌味を言いたいのだろうか)

「健康だよ彼女は、元気に仕事する姿も魅力なんだ…伴侶に相応しいと判断したしね」

「ふうん……あ、そ、…」

興味を無くしたのか、あっという間に目の前から消えた



これも彰貴さんが言ったことだが…

「母は身体が丈夫ではなくてね…子どももオレを産むのでやっとで…身体も壊しがちなんだ」

だから次期社長の奥さんには健康な人をと親戚は言い続けているんだそうだ

(仕事もしていて健康で…)

『好きになった人と結婚する』

そんなことは彰貴さんには許されないと言うことだ

何だか可哀想な気がしてしまう

続いてやってきたのは叔父夫婦こちらは温厚な人で彰貴さんを昔から可愛がってくれる…味方らしい

「おお、彰貴!」

「ご無沙汰しておりますユキト叔父さん…」

「元気そうで何よりだ
で?彼女がお前が見つけた子か………」

「はい、彼女が那寿奈です…」

優しい視線で私を見たユキトさんは少しだけ首を捻った

「ん?どこかでお会いしたこと…ないかな?」

「いえ…無いかと思いますが…」

一瞬ドキッとしたがそれは彰貴さんに知られたくない












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