囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
おかしな生活
そこでハタと気が付く

ものすごく抱き締められていて彰貴さんが私を甘い瞳で見下ろして
今にもキスをしそうな雰囲気だけど…

(左東さんが居るし!!!!)

「…そ、の…彰貴さん…お仕事は?」

見つめ合ったまま気まずくてそういうと彰貴さんの眉間に皺が寄る

「なぜ、この雰囲気で仕事の話を持ち出す…ここはこのまま…」

彰貴さんは尚も私の頬に手を添えるが私もここは引くわけにもいかない

「だ…って先ほどからポケットが振動してます…」

これは本当で、たぶん彰貴さんは仕事を抜けてきてくれたのだろう
先ほどからポケットの中のスマートフォンがひっきりなしに震えているのだ

「ったく…すまない…少し待ってくれ」

少しだけ苛立ちを見せた彰貴さんはポケットからスマートフォンを引っ張り出して

少し乱暴に電話に出た

「私だ…え?すぐに戻ると言ったろう?は?もう30分近い?
…分かった今から戻るから頼む…」

時計を確認して彰貴さんは忌々しそうに前髪を掻き上げた

「戻ってください?私なら大丈夫ですから…ね?」

「左東、エントランスに再度付けてくれ…」

話をするためか動いていた車がすぐに会社に戻る

「すまない…なるべく早く帰るから…」

彰貴さんが名残惜しそうに指を絡めて来たのでそれをゆっくりと解く

「大丈夫です。雑草ですから、丈夫でへこたれませんから!お家で待ってます」

「左東、那寿奈を頼んだぞ…那寿奈、また夜に…」

「心得ております彰貴様、お任せください」

彰貴さんはするりと扉から飛び出すとビルの中へ走っていった

(びっくりした…)

「愛されていますね?那寿奈さん…あんな彰貴様は初めて見ました…自信をもってくださいね」

「え…あ、いや…その…」

嬉しそうな左東さんには申し訳ないが

彰貴さんには私への恋愛感情はない

偽りの恋人にここまでするものなのだろうか…彰貴さんが分からない…


そのまま車は邸宅に戻る





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