囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「え?どうして?」

気付いた時には屋敷は人の手に渡っていた

付き合って2年…婚前旅行に行こうと5日間家を空けたところ…戻ったらもう家が他の人のものになっていた

持っていたのは旅行に持ち出した着替えと貴重品位で思い出の品も何もかも処分されていて


途方に暮れて坂下を訪ねると
坂下の家にももう誰も居なくて…

残ったのは坂下が作ってしまった借金だけだった


親が居ない私と親に捨てられたらしい坂下

「ナズナは雑草でしょ?ユリとかバラとかと違ってとっても丈夫でどこでも生きていけるの」

「雑草か…おれも根が無い根無しの雑草だな。雑草同士仲良く生きていこうな」

そんな風に旅行でも笑っていたのに

全ては偽りだった…この2年ほどの交際は坂下は詐欺で様々なものを奪われるだけの期間で
あの恋はただの偽物だったということだ

両親が遺してくれたものも…根こそぎ奪われ
私にはわずかな貯金と着替えだけが残され
借金が少々

仕事は結婚するからと辞めていたし

そこからは友人、知人の家やツテを転々としたが
保証人になってくれる人もなくなかなか部屋も借りられずに

アルバイトで繋ぎながら
生きていくので必死で…もがいて生きて居た

そして…やっと住まわせて貰ったアパートも立ち退きが決まり
…あの仮眠室に住んでいたのだ

「途方に暮れてリュミエールに就職したのは…飲食店なら食べるのに困らないし、人手が足らず割とすぐに就職できたからで…今は誇りをもって働いていますけれど
動機が極めて打算的なんです…」

ここまで話して私は彰貴さんの顔が見られない…

「軽蔑しますか?」

「どこをどう軽蔑しろと?こんなに那寿奈は真っ直ぐなのに?」

彰貴さんが私を引き寄せた

「軽蔑するよりも愛おしいと感じるのは間違いか?」

「え…」

「那寿奈を守りたいと思う…好きなのかと問われてもはっきりとは答えられない
けれど…君が泣いているならその涙を拭うのはオレがいいと思うのは…間違いか?」

キザなセリフだった…けれど彰貴さんの気持ちに嘘はなさそうで…

私は首を振ろうとした瞬間

「彰貴様…それが『愛する』と言うことですよ」

左東さんが柔らかく呟いた
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