囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「気安く呼ばないで」

顔も見たくなくて身体を捻りそこから逃げ出そうとした

「冷たいねぇまたまた…でも、リカコ…どうだった?
お坊っちゃま慌ててたんじゃないか?この女が偽物だと暴露されて」

坂下は口をニィと左右に引き上げた

「全然動じてないわよ……本気なんですって…私が恥をかいたわ」

「は?んなアホな…契約だって…なぁ?」

坂下が私の前に詰め寄ると…

「那寿奈さん!!」

走ってくる左東さんの姿が見えた

そして
左東さんが坂下に掴みかかろうと距離を詰めると

触れる前に坂下が転がって叫んだ

「あぁって、イテェ!!」

その後ろから現れたのは冷たい顔をした美麗男子…

「彰貴さん!」

彰貴さんだった…

「那寿奈大丈夫か?…すぐ終わらせる…」

そう私には微笑むがすぐに氷の視線で坂下を腕の下で睨むように見下ろした…

「…オレで良かったな?左東なら骨が折れていたかも知れないぞ…大丈夫だ、折れてはいない筈だからな、2度と那寿奈に近付くな!」

坂下を片手で捻り上げたまま言い放った

「んだよ…イテ、離せよ!その女はあんたみたいなお坊ちゃんには相手出来ないぞ?」

「うるさい!那寿奈の事はお前より前から知っている…誰か…摘まみ出しておいてくれ…」

「は?…あ、やめろっ!!」

(え?…)

坂下を左東さんや警備員が抱えて通路から連れ出すと

呆気に取られたリカコと呼ばれた女性と私
そして涼しい顔をした彰貴さんが残された

「なんなの、アレ…」

リカコさんは泣いていた涙が引いたらしく
先程までの高圧的な美女に戻っていた

(一体なんなの…)

そんな彼女に彰貴さんは眉間にシワを寄せながら話した

「リカコ…君は…これ以上自分の価値を下げないほうがいいぞ、早くご両親の元へ帰れ」

口調は冷たいが心配もしているのだろう
彼女の両親なら彼女を守ってくれるだろうから…

「もうあんたなんかに関わらないわ…最悪よ…さようならっ!」

彼女にもそれは伝わったのかカツカツとヒールを鳴らしながら通路から去って行った

「那寿奈…まったく君って人は…お人好し過ぎるだろ?…」

ギュッといつものように前から抱きしめられ…すっぽりと身体が彰貴さんに埋まってしまう

爽やかな柑橘系の彰貴さんの薫りに心が緩む

「ご、ごめんなさい…でもあまりに泣いていたし…心配で…」

「そこが良いところだけど…ああもう、心配した…」

彰貴さんの言葉に今更ながら脚がガクガクと震え出す




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