囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
病室に行くと既に彰貴さんが到着していて
ベッドの上のお義母さまの手を握って座っていた

「彰貴さん…」

声を掛けると潤んだ瞳がこちらを見上げた

「ああ…那寿奈、有難う…母さん、那寿奈が来たよ」

お義母さまは意識があるようで目をこちらに向けて優しく細めた

「あら、大袈裟なんだから……ただのめまいよ?ちょっと倒れただけなの…」

そうは言うが明らかにいつもより顔色が悪い

「そうでしたか!でも心配します…ゆっくり休んでくださいね…またパズル作りたいですお義母さまと」

努めて明るく振る舞った

彰貴さんの顔を見ればお義母さまがあまり良くないのだろうと思えたけれど
けれどここで悲しい顔をするわけにはいかない

「そうね、そうね…彰貴、ちょっと那寿奈さんと二人でお話したいの外してくれる?」

「分かった…少し外にいるから…那寿奈、頼んだよ」

「はい、任せてください」

彰貴さんは私の手をぎゅっと握って部屋を出ていった


二人きりになった病室でお義母さまが指を上げてある場所を指差した

「那寿奈さん、そこの引き出しを開けて…茶色の袋を出してくれるかしら」

「はい」

備え付けの引き出しを開けると茶色の革の袋が入っていた

両手と同じ大きさ位の袋は大きさの割に軽かった

「どうぞ」

手渡すと白い指がゆっくりと袋を開けて中身を取り出す

出て来たのは蓋が被さっているタイプの木の箱で……お義母さまはそれを私に差し出した

「開けてみて?」

「…」

恐る恐る箱の上蓋を持ち上げて開けてみると

中にはネックレスが入っていた

シンプルな銀のチェーンに
大粒ダイヤモンドの周りにアメジストとパールがあしらわれた豪奢なトップ……

「こ、これは…?」

「辻堂の家に伝わる宝石です…辻堂の当主の妻だけが持つ事を許されるものよ?高価と言う意味合いよりは魔除けや一族の繁栄を願う護符に近くて…人目に触れずに保管して式典だけに身に付ける…そして代々受け継いで行くものなの…だから貴女にこれを授けます」

アメジストはパワーが強い石だと聞いたことがある

「これを…私に?」

「ええ、私がまだ元気なウチに貴女に託さなくちゃと思っていたのよ…貴女はこれを持つに相応しい女性だわ、彰貴をよろしくね?」

私は震えが止まらなかった

「そ、そんな……私なんて…」

「あの無表情の彰貴をあんなに表情豊かにした貴女しか、辻堂彰貴の妻にはなれません、自信を持ちなさい?ね?」

母が生きていればこうして認めてくれただろうか
その優しさに涙が出た

「お義母さま…有難うございます」

改めて手を握りお礼を言うと

「これはね…女性だけが受け継ぐ秘密なの、彰貴には内緒よ?」

と、お義母さんはフフフと微笑んだ








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