囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
囚われ生活のススメ
「それでは行ってらっしゃいませ」

「はい!行ってきます!」

今日も左東さんに見送られ出勤する

2週間の無断欠勤をした私を支配人は苦笑いで復帰させてくれた

「専務から慌てて休みの連絡来ましたし、何よりも月島さん居ないと……フロアの人数も笑顔も足りませんから」

そんな風に言ってもらえて良かった

定食屋さんにはすぐに彰貴さんがパートの女性を紹介したそうでおかみさんからお礼の電話が来た

「色男で仕事が出来て、しかも御曹司…素敵な人ねぇ、那寿奈ちゃん幸せになるのよ?また二人で食べにいらっしゃい」

たった二週間しか居なかった私にも優しいおかみさんの優しい言葉に本当に感謝しかなかった

「はい…有難うおかみさん…」

彰貴さんに聞いたら会社のアルバイトにいた女性が辞めて
地元に帰ると聞いて

その地元が定食屋の近くだったそうで、口利きをしただけだとは言っていたけれど……
実際はどうなのか知らない

けれどおかみさんの話ではとても真面目に仕事をする可愛らしい人だそうなので安心した


彰貴さんの話だと紺上の祖父は病気で退いたのではなく…
辻堂との契約で当主を降りたのだそうで…

「まぁ、君が知る必要はないさ…ただ、これで紺上は那寿奈に手出しは出来ないから安心していいよ」

そして、付きまとっていた坂下について聞くと…

「ああ、それも解決済み…二度と現れないと思うよ」

ゾッとする程冷たく美しく微笑んだので

(怖……)

「そそそ、そうですか…有難うございます…」

ここは私が手を出していい世界ではないのだろうと
そこで納得することにした




ランチタイムが終わり休憩室でディナータイムまでの休憩をしていると

ネットサーフィンをしていたスマートフォンが珍しく着信を告げた

「はい……」

『那寿奈さん、お仕事中申し訳ありません』

出ると


「休憩時間なので大丈夫です…どうかされましたか?」

『奥様が倒れまして…今そちらに向かっておりますのでご支度ください、エントランスに車を回しますのでそちらに来てください…支配人には話が別口から行っていると思いますので』

「分かりました、すぐに準備します」

急いで服を着替えると同僚に早退の旨を伝え

ホテルのエントランスへ急ぐ

ホテルを出た所で左東さんの車がやってきて乗り込んだ

「有難うございます左東さん…それでお義母さまの容態は?」

最近はだいぶ調子が良いと聞いていたのに

「まだ何とも…とにかく参りますね」

「はい、お願いします…」

(どうか、ご無事で……)

祈るような気持ちで車窓を眺めていた







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