誓いのキスを何度でも
ピザを待つ間に誠太郎と、誠一はお風呂に入り、
シンさんと私はあり合わせの野菜でアッサリとしたミルクのスープを作った。

私達は賑やかに食卓に付き、

「これ、うめー」

とシンさんが作ったスープを誠一と誠太郎がお代わりしていて、

「食べさせがいのある親子だな」とシンさんは楽しそうに笑う。

確かに。
なんでもよく食べるってところも似ているのかもしれない。
誠太郎は好き嫌いがなく、結構丈夫なのは
こんなところも関係しているのかもしれない…

みんなでよく食べて満腹になると、

シンさんが誠太郎の宿題を見ている間に

誠一と私が食器を片付ける。


「さて、帰るか」とシンさんが立ち上がり、誠太郎が抱きついてサヨナラの挨拶をする。

「桜庭くんと喧嘩したら、連絡してきていいよ。
僕はいつでも誠太郎君の味方だからね。」

とそっと頭を撫で、誠太郎は何度も頷いてから
誠一に抱きついて、泣くのを我慢しているようだ。

「果歩、送っておいで。誠太郎は寝かせておくから」

と誠一が言ってくれるので、私はシンさんと一緒に階段を降りる。


「果歩。元気で。
果歩は僕に連絡してきたらダメだよ」と言いながら、車の前で私を抱きしめ、頬にキスをする。

「…はい。
今まで楽しかったです」私は涙を耐えて微笑んで見せる。

シンさんに最後は笑顔を見せたほうがいいのだと思う。
仕事の時と違う笑顔が好きだと言ってくれていた。

「桜庭くんと一緒になるのは大変かもしれない。
でも、愛し合ってる2人ならきっと大丈夫だよ。」

と私の頭をポンポンと撫でて、私から離れ、車に乗り込む。


「…頑張ってみます」

「頑張ってる果歩が好きだけど、たまには桜庭くんに我儘を言って甘えなさい。
きっと受け止めて大切にしてくれるよ。
大丈夫。
じゃあ、サヨナラ、果歩」

と言われ、引き留めたい気持ちを抑えて笑った顔で手を振る。
きっと、私に頬には涙が流れているのだろう。

シンさんはいつものように静かに微笑んで車を発進させ、ハザードを光らせてから見えなくなった。





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