誓いのキスを何度でも
電車の中で、桜庭 誠一の事が沢山思い出されて、鼻の奥がツーンとした。
油断すると、涙が流れ落ちそうだ。

元気そうだった。

私はあの時桜庭と二度と交わらない未来を選んだ。

もう、いい。

もう、忘れてほしい。

思い出すのは私だけでいい。


私の髪を梳く長い指先。
楽しそうに私の瞳を覗きこむ切れ長の瞳。
愛してると囁く唇。
身体を重ねた時の高い体温。


離れなければならない運命だったのに、
何故出会ったのだろう。

お互い未熟だった。



7年前。
私は未来のない恋に落ちた。

出会ったのはカラオケボックスだ。
仕事を始めたばかりの私はむしゃくしゃした時に、カラオケで『secret monkey』の曲を熱唱して、ストレスを発散していた。

少し酔った桜庭が間違って私がひとりで歌う部屋に入ってきたのがキッカケだ。

目を閉じ、大声で熱唱していた私は桜庭が入って来たのに気づかず、気持ち良く歌い終わって、
熱心に拍手する年上のイケメンの男に驚いたけれど、
「すごく上手いな。もっと歌って」とアンコールされ、
始まっていた曲を歌うと、

「その曲secret monkeyの曲でしよ。俺も好き。一緒に歌っていい?」と言われ、意気投合して、一緒に大声で歌ったが始まりだ。

連絡先を交換して、カラオケボックスで会い、一緒にライブに行くようになって、
年は7歳違うけれどお互いそんな事は気にならないくらい
どんどん距離が近づいた。

私達は同じ病院に勤めていると後から知ったけど、(このカラオケ店は結構仕事場の2次会で使われているらしかった)
お互い知らん顔を通し、
カラオケボックスで会い、満足するまで熱唱し、その興奮のまま、身体を重ねた。
私にとって初めてのオトコだったけど、
そんな事は直ぐに、気にならなくなるほど、お互いに夢中になっていった。

まあ、桜庭が言うには
心も身体も相性が良い。という事だった。
< 8 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop