この手だけは、ぜったい離さない



まさか洋くんが、好きな人を教えてくれるって言うなんて思ってなかったから驚いた。



「やっぱり……いい。聞かないことにする。だから私も、私の好きな人は教えられないかな…」



だって、洋くんの口から私の名前がでるはずがない。



それに今の私はぜったいに「そうだったんだ、うまくいけばいいね」って笑えないんだもん。

洋くんが他の女の子の名前を口にしたその瞬間に、泣いてしまうってわかってるから。



それなのに私は私の好きな人が洋くんだって言えば、今のようなこの仲良しな関係は崩れてしまうんだ。

気まずい関係になってしまうんだ。

そうなれば、私と洋くんはもう友達じゃなくなる。



一緒に帰ることはもちろん、笑いかけられることだってなくなってしまうかも。

そんなの嫌だ。

それなら私は私の気持ちをひた隠したまま、今のままの関係でいい。



「……ちぇ。なんだよそれ…」



洋くんの大きな手から、私の手首が力なく滑り落ちる。

「ごめんね」って謝る私にさっと背を向けた洋くんは「帰るぞ」と1歩先を歩きはじめた。



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