幾千夜、花が散るとも
3章
「合コン・・・ですか?」

「違う違う、ただの飲み会! 商品開発課の同期とか、たまに飲むんだけどさぁ、可南子を紹介してくれって言われてたのよ。会うだけ会ってやってくんない?!」

「あのでも、あたし今つきあう気とか全く無いんですよね」

「うん、だからそう言ってやればいいって。とにかく一回会えば気が済うと思うし、可愛いセンパイを助けると思ってお願いっ」

 箸を片手に、もう片方の手で拝み倒される。

 いつも通りにみなみ先輩とお昼休憩で、お弁当を広げた瞬間の誘いだった。千也を彼氏だって豪語したい。ああ、してやりたい。この際、一也を・・・。なんて、らちもないコトを考えたりもしたけどこういうのも処世術ってゆーし。
 内心はクソめんどくさいって暗黒オーラを全開にしながら、仕方ないって困り顔でみなみ先輩にOKを出す。

「取りあえず今回だけですよ先輩。・・・で、いつですか、それ」

「ん、今日?」

「はい?!」

「ほら、今日ってプレ金で全員残業ないじゃん? 6時から、地鶏が美味しいって『ひばり屋』だっけ、あそこ予約してあるって。宜しくね!」 

 ・・・・・・・・・・・・・・・。
 他人の都合にお構いなく、あっけらかんと笑う先輩に悪気はないのか、実はあるのか。どっちにしろ連れてかれるハメになった気もするし。潔く諦めよう、くそぉ。

 そもそもプレミアム金曜って、月末の週の金曜を早上がりにしてサラリーマンにお金を落とさせようって、政府の魂胆だったよね。ウチの会社もそれに乗ってノー残業デーに決まったけど、行きたくもない飲み会を強要されるぐらいなら、無くていい。てか今すぐ断固撤回を要求する!
 
「じゃあ一也にラインしとかないと。夜ご飯作れないって」

 あたしはわざと苦笑いを浮かべて見せる。

「あ、そっかぁ。そうだよねぇ」

 いつも飲み会を断る口実は、家族の夕飯を自分が作るからにしてあって。だからまあ、みなみ先輩もその辺は分かってるハズなのだ。それでも頼んできたぐらいだから、断り切れなかった付き合いってモンもあるんだろう、きっと。

「二次会あっても行きませんよ?」

「うんうん」

「遅くても9時には帰りますからね」

「いいよ、いいよ」

 みなみ先輩はモグモグとおかずを口の中に運びながら愛想よく、すっかり他人事みたい返事をしたのだった。



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