幾千夜、花が散るとも
9章
 家から車で20分かからない位の病院に決め、母子手帳をもらった時。ああ本当にあたしのお腹に千也の子がいるんだって、また泣きそうになった。何がなんでもこの子は守らなくちゃ。肩に力が入ってるあたしに千也は優しく笑う。

『大丈夫だよカナ。オレも一也も一緒だから』

 頭を撫でてキスを落として。手を握って、心配ないよって繰り返す。


 出産なんて未知すぎて、死ぬほど不安で怖い。あたしには教えてくれる母親もいない。でも駄目だ、この子にそんなモノ見せちゃ。

 どれだけ愛しくて逢えるのを心待ちにしてるか。
 キミはどっちかなぁ。女の子なら千也に名前決めてもらわなきゃ。
 生まれて来たら“パパ”が2人だよ? きっと毎日が楽しいからね。

 お腹を両手で包み込んで、あたしは歌うように祈る。

 どうか無事に生まれてきてね。弟か妹もすぐに出来るよ。すっごく仲の良い兄妹になるに決まってる。だって、あたし達の子なんだからね。
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