同僚は副社長様



「……あれ?芽衣は?」


お手洗いから戻ってくると、テーブルには親友の姿はなく、響くん一人だけだった。


「婚約者と式場の打ち合わせだってさ。ここのお代はきっちり払って出てったよ」

「コーヒー1杯くらい、気を遣わなくても良いのに」

「そう?俺は、式場の受付とその他諸々の雑事を押し付けられて、コーヒー1杯じゃ足りないくらいだけどね」


軽口を叩きつつも、柔らかい視線で芽衣が座っていた席を見つめる響くんを横目に思う。

本当、昔も今も、羨ましくなるくらい仲のいい兄妹だよね。


「…成功、させたいね」

「ああ、そうだな…アイツのとびっきり喜んでる写真、撮らなきゃだしね」

「え……」


なんで、私の思ってること、わかるの?

きっと当日は忙しくなるだろうし、写真撮る時間さえ確保できるかわからないけど、親友の晴れ姿を1枚くらい絶対にカメラに収める。

そんな小さな企みを一言も口にしていないはずなのに、響くんはいとも容易く見抜いた。

隣で固まる私に、響くんはふわっと微笑んでこう言った。


「美都のそういう親友想いなとこ、好きだよ」

「……っ」


ああ、まただ。

再会して2人きりで飲んだ時も、響くんはこんな風に甘いセリフを口にしていた。

再会する以前は、全くそんな雰囲気はなくて、むしろ響くんが中学に上がった頃は私に会うの避けてたみたいだったし…。

再会する前後で感じる響くんの違和感に、私は少し戸惑っていた。


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