Dear Hero
ある日は、ソファで眠り込んでしまい、気づいたら朝だった事もあった。
掛けてある毛布が何だか重くて起き上がると、床に座ったまま毛布に突っ伏して眠っている水嶋。

「水嶋。起きろ」
「澤北くん…?おはようございます…」
「おはようじゃねぇよ…お前冷たくなってんじゃん。なんでこんなとこで寝てんだよ」
「澤北くんが毛布蹴飛ばしてないか心配で夜中見に来たら、あまりにも寝顔がかわいらしかったので…見入っていたらそのまま寝ちゃいまし……くしゅんっ」


結局風邪ひいて寝込んでた。
なのに怒られたのはなぜか俺だった。

その日はファミレスのバイトは休ませてもらって急いで家に帰った。
今は姉ちゃんと颯希の部屋の片隅に布団を敷いて、そこで寝ている水嶋。
こっそり部屋に入ると、薄暗い中ですうすうと寝息を立てて眠っていた。
寝顔がかわいいのはどっちだよと思いながら、熱のせいなのか夕焼けのせいなのか、紅く色づいた頬を撫でる。
ぱちっと目を開けると、「さわきたくんだぁ」とか弱く笑って俺の手を取ると安心したように再び寝てしまい、そんな姿を目の前に動く事もできずに、どんな拷問かと思った。


この部屋、前はもっと散らかっていたと思っていたけど、思っていたよりきれいに片付いていたのは、きっと水嶋が片付けているんだろうな。
そんな話をしたら、「なに勝手に部屋入ってんのよ!」とむちゃくちゃ怒られた。



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