Dear Hero
「お前も用事ないならもう戻りな。早くしないと俺、狼さんになりますよ」


部屋で佇む依に声をかけると、優しい声でふふっと笑った。


「……なに」
「ごめんなさい。でも…やっぱりかっこいいなと思って」
「…っ!なんだよ唐突に…。褒めても何も出ないぞ」
「ふふっ。私が言いたいだけです」


ゆっくりと歩み寄ると、そっと俺の手を取る。

「また……大護くんに助けてもらいましたね」
「………」
「大護くんは、私の心の声を拾ってくれる優しいヒーロー」
「………」
「そして、私を全力で護ってくれる強いヒーロー」
「………」
「私の、大好きなヒーローです」





—————俺は、
変身なんてできない。
敵だって倒せない。
地球のみんなどころか自分の周りの大切な人たちだけで精一杯だ。



『強くなりたい。大事な人たちの笑顔を護るヒーローになりたいんだ』



それは、小さな頃から憧れていた夢。
笑われて、バカにされて、ボロボロになって一度は砕け散った夢。


それでも、応援してくれる人がいたら力が湧いてくるんだ。
こんな俺でも、ヒーローになれる。





目いっぱい背伸びして俺に口付けると、鈴のような声が耳元で囁いた。





—————これは、ヒーローを目指す少年とその少年に救われた少女の物語。
—————そして、惹かれあう二人が結ばれるまでの物語。





「Dear Hero, Thank you」





- END -




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