Dear Hero
***
黙々とノートをまとめる水嶋の手は、まだまだ止まる様子はなさそうだ。
「ちょっとだけ…!忘れないうちにまとめたいので少しだけ待ってください…!」と頼まれては断る理由もなく、ソファでくつろいでいたものの、だんだん暇を持て余してくる。
これは、俺がいる事忘れてつい夢中になってしまいました、ってやつだろうな。
ソファに沈ませていた身体を起こし、ローテーブルの前に座り込んでいる水嶋に近づくと、くるりと巻かれた毛先を手に取り、指に絡ませる。
いきなり触れられ、驚いたのか「ひゃぁ…!」と身をすくめるとこちらに気付き、「…は!澤北くん…!す、すみません、澤北くんいる事忘れてつい夢中になってしまいました…」とアワアワ。
…ほら見ろ。思った通りのリアクション。
「ごめんなさい、つまらないですよね。何か…本でも読みますか?」
俺は相当不機嫌な顔をしていたのだろうか。
水嶋は慌てて立ち上がる。
「本は…あんまり読まない。活字キライ。いつも漫画しか読まねぇや」
「少しは漫画もありますよ」
「まじ?見る!」
一気にテンション上がる。
そんな俺を見てくすくす笑う水嶋。
「水嶋も漫画とか読むんだ。意外」
「私はあんまり読まないので、叔父の物になりますが」
案内された部屋には、天井の高さまで壁びっしりに連なる本棚と、その中にぎっしり詰まったたくさんの本。
これが、いわゆる“書斎”ってやつなのかな。
「父が多趣味だったようで、色んなジャンルの本が色々あるんです。今では叔父の漫画用に使われていますけど」
確かに。本棚にはゴルフやテニスなどのスポーツ物から音楽雑誌、車関連や旅行本。
もちろんそれだけじゃなく難しい漢字の並んだビジネス本や、小説なども。
手前の本棚には比較的新しい漫画がキレイに並んでいる。
これが例の叔父さんの分かな。
「…あ、そういえばインテリアの本もあった気がします。もしかしたら何かの参考になるかもしれません。確かこの本棚の…」
本棚の背表紙を確認しながらだんだん目線が上に移動していく。
それ以上は高さが届かず見えないのか、踏み台を持ってきてさらに上の本を確認していく。
「あ!ありました!」
見つけたらしいその本は、踏み台の上でさらに背伸びし、腕を伸ばしてやっと指が届くくらいの位置にあったようだ。
小さな踏み台の上でぴょこぴょこジャンプする水嶋。いや、届いてないし。
「ちょ、危ないから。俺取るよ。どれ?」
水嶋の後ろに立ち、目的の本を探す。
「この…茶色の背表紙の…」
届かぬ手で指し示されて、ようやく目的の本とご対面。
取ろうと手をかけようとした所で、伸ばされていた水嶋の手と触れてしまった。
黙々とノートをまとめる水嶋の手は、まだまだ止まる様子はなさそうだ。
「ちょっとだけ…!忘れないうちにまとめたいので少しだけ待ってください…!」と頼まれては断る理由もなく、ソファでくつろいでいたものの、だんだん暇を持て余してくる。
これは、俺がいる事忘れてつい夢中になってしまいました、ってやつだろうな。
ソファに沈ませていた身体を起こし、ローテーブルの前に座り込んでいる水嶋に近づくと、くるりと巻かれた毛先を手に取り、指に絡ませる。
いきなり触れられ、驚いたのか「ひゃぁ…!」と身をすくめるとこちらに気付き、「…は!澤北くん…!す、すみません、澤北くんいる事忘れてつい夢中になってしまいました…」とアワアワ。
…ほら見ろ。思った通りのリアクション。
「ごめんなさい、つまらないですよね。何か…本でも読みますか?」
俺は相当不機嫌な顔をしていたのだろうか。
水嶋は慌てて立ち上がる。
「本は…あんまり読まない。活字キライ。いつも漫画しか読まねぇや」
「少しは漫画もありますよ」
「まじ?見る!」
一気にテンション上がる。
そんな俺を見てくすくす笑う水嶋。
「水嶋も漫画とか読むんだ。意外」
「私はあんまり読まないので、叔父の物になりますが」
案内された部屋には、天井の高さまで壁びっしりに連なる本棚と、その中にぎっしり詰まったたくさんの本。
これが、いわゆる“書斎”ってやつなのかな。
「父が多趣味だったようで、色んなジャンルの本が色々あるんです。今では叔父の漫画用に使われていますけど」
確かに。本棚にはゴルフやテニスなどのスポーツ物から音楽雑誌、車関連や旅行本。
もちろんそれだけじゃなく難しい漢字の並んだビジネス本や、小説なども。
手前の本棚には比較的新しい漫画がキレイに並んでいる。
これが例の叔父さんの分かな。
「…あ、そういえばインテリアの本もあった気がします。もしかしたら何かの参考になるかもしれません。確かこの本棚の…」
本棚の背表紙を確認しながらだんだん目線が上に移動していく。
それ以上は高さが届かず見えないのか、踏み台を持ってきてさらに上の本を確認していく。
「あ!ありました!」
見つけたらしいその本は、踏み台の上でさらに背伸びし、腕を伸ばしてやっと指が届くくらいの位置にあったようだ。
小さな踏み台の上でぴょこぴょこジャンプする水嶋。いや、届いてないし。
「ちょ、危ないから。俺取るよ。どれ?」
水嶋の後ろに立ち、目的の本を探す。
「この…茶色の背表紙の…」
届かぬ手で指し示されて、ようやく目的の本とご対面。
取ろうと手をかけようとした所で、伸ばされていた水嶋の手と触れてしまった。