秋の月は日々戯れに
抜けきらないアルコールでぼんやりしていた後輩だが、受付嬢の顔を視界に映した途端、目を大きく見開いて勢いよく飛び起きた。
近くにいた彼が驚きでビクッと肩を揺らすのも構わず、後輩はふらふらと前に進んで、足元のテーブルにつまずいて体制を崩すと、テーブルに手をついた前かがみの姿勢のままで顔を上げる。
「おまっ、お前……お前のせいで…………!」
言葉を詰まらせながら、後輩はふるふると震える。
その目には、今にも零れ落ちそうな程に涙が盛り上がっていた。
「拓(たく)がそんなんだから、さやかさんに愛想つかされたんじゃないの?とりあえず事情はきちんと説明してもらうけど、先に言っておく、全部お前が悪い」
後輩を見下ろす形で言い放った受付嬢は、会社での眩しい笑顔からは想像もできないような、冷え冷えとした声と表情をしていた。
途端に、後輩は脱力したようにテーブルの上に突っ伏して
「……そうだ、オレだ、オレが悪いんだ。……愛美(まなみ)なんかに頼ったオレが悪いんだぁあああ!!」
激しく泣いた。
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