秋の月は日々戯れに
変わり身が早いのはいつものことだが、カップに投入している粉末コーヒーの量はいつもより若干多い。
どうやら機嫌は治っても、苦いコーヒーをおみまいしてやる気持ちは変わらなかったらしい。
子供っぽい彼女にやや呆れながら、彼は最後の缶をゴミ袋に入れると、袋の口を縛ってから邪魔にならないように部屋の隅に置いた。
「お疲れ様です。お手伝いもせずにすみません」
片付けを終えてテーブルの前に腰を下ろすと、対面に座っていた受付嬢がぺこりと頭を下げる。
「謝ることない。悪いのは、全部こいつなんだからな」
対面の受付嬢からその隣の後輩へ、視線を移して放った刺のあるセリフに、しかし本人は全く動じない。
それどころか、テーブルに突っ伏したまま顔すら上げない。
「拓、もしかしなくても寝ていますかね……?」
「寝てるだろうな、この様子じゃ。さっきまでメソメソ泣いてたくせに、今じゃこんなに静かだ」
いつぞや二人で飲みに行った時を彷彿とさせるような光景に、彼は後輩の頭を軽く小突く。