秋の月は日々戯れに

受付嬢が、またこの世の終わりみたいな顔をして嘆く。


「もしも拓がさやかさんと結婚できなかったら、きっと拓はこの先一生一人なんです。万が一そんなことになったら、私が貰ってあげなくちゃいけなくなるんですよ!うちの両親も拓の両親も、目がとんでもなく本気でした。これは、拓とさやかさんの問題でもあり、私の未来に関わる問題でもあるんです!とっても重大なんです!」


なるほど、ここまで必死になる理由は、従兄弟に幸せになって欲しいと言うよりも、自分の為であったのかと、彼は密かに納得する。


「私は、大人の余裕がある年上の男性が好みなんです!拓も一応年上ですけれど、あれは論外です。年が上なだけで、中身は私より年下なんですから」


酷い言いようだが、彼としても家に何日も居座られた経緯があるため、特に弁解してやる気は起きない。


「ですからどうしても、さやかさんの誤解を解かなければいけないんです!そのために日々努力しているのですけれど……どうにもさやかさんに避けられてしまっていて」


避けられているというよりは、完全に逃げられている。
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