秋の月は日々戯れに


「だから、あなたがイライラしてはいけません。今わたし達は、静かに待ち、そして成り行きを見守るべき時なのです」


重たくまとわりつくようだった沈黙が、彼女の言葉に、その煩わしさを薄れさせる。


「……分かってますよ」


自分でも気がつかないうちに感じていた苛立ちを、彼女に見破られた事がなんだか悔しくて、一息にコーヒーを煽ったら、カップの中はすでに空だった。

それを見た彼女が、可笑しそうにクスッと笑う。


「おかわり、お持ちしましょうか?」

「いいえ、結構です。自分でやります」


受付嬢と同僚の間に流れる空気を不用意に掻き回さないように、静かに立ち上がってキッチンスペースに向かった彼に、なぜか彼女も続く。


「なんでついてくるんですか」

「いけませんか?」


それからしばらく、部屋の中にはコンロの火が立てる微かな音だけが響いた。

カップにコーヒーの粉を入れて、お湯が沸くのをぼんやり待っている彼と、その隣に何をするでもなくただ立っている彼女。
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