秋の月は日々戯れに


「それで、あの二人はどうなったんですか?問題はちゃんと解決したんですよね」


家に帰って第一声彼女に問いかけると、問われた方は「まずは“ただいま”“おかえりなさい”の挨拶が先ですよ」
と膨れた。

仕方なく彼が「ただいま」と返すと、彼女は上機嫌に「はい、おかえりなさい」と応じる。


「ひとまず、同僚さんの勘違いは解消されたと思いますよ。事の発端は、後輩さんと受付嬢さんが一緒にいるところを、たまたま同僚さんの友人が目撃したことによるそうなのですが、実際はその時、お二人は何をしていたというわけでもなかったようです。ただ、一緒にランチをしていただけで」

「……ランチですか?」


「はい」と彼女は頷く。


「後輩さんは、受付嬢さんに何かと貸しを多く作っていたようで、その清算にランチを奢らされているという構図が、奇しくも同僚さんのご友人には“浮気”現場に見えてしまったようです」


「お二人の醸し出す空気が、よほど親密だったのでしょう」と続いた彼女の言葉には、彼も思い当たる節があった。
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