秋の月は日々戯れに

間違っても、“嫁がせて頂きます”ではない。

それなのに、なぜだか嫁入り気分の彼女は、今日も朝から「旦那様はツンデレですね。せっかくの新婚なのに」などとほざいている。


――あれか、これは暇を持て余した幽霊の新婚ごっこなのか。だとしたら、それに付き合わされる人間の身にもなって、早く成仏して欲しい。


朝からどっと疲れて深々とため息をつくと、彼は顔を洗いに洗面所へと向かう。

冷たい水でバシャバシャと顔を洗って一息つき、パッチリと目が覚めたところで、実は全て寝ぼけた脳が見せた幻覚でしたというオチを期待していたのだが、部屋に戻ってみると彼女はまだベッドの上にいた。

透けた足をフラフラと揺らして、ベッドの縁に腰掛けていた。


「新妻の勤めとして、寝起きの旦那様にエプロン姿で駆け寄って“ご飯、出来ていますよ”と言ってあげたいところですが、生憎とわたしはこんな体なので、お味噌汁も作れません」


戻ってきた彼を見て、揺らしていた足をピーンと伸ばした彼女は、残念そうに呟いてまた足を下ろす。


「あなたは新妻じゃありませんから結構です」
< 5 / 399 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop