天神学園のお忍びな面々
袖無し赤道着、足元は裸足。

白雪ならばいざ知らず、人間の身で、あの出で立ちはさぞや極寒であろう。

大樹の根元に座ったまま、白雪は甲斐の稽古の様子を見ている。

この森の清浄な空気に負けぬほどの、真摯で朴訥なまでの、甲斐の武道に対する姿勢。

聖域であるこの場に、白雪が立ち入る事を許したのも頷ける。

彼はこの森がどのような場所なのかは、然して興味がない。

森を荒そうとも、騒がそうとも思わない。

ただ、ここならば落ち着いて稽古が出来る。

それだけの理由で借り受けていた。

体を限界まで縮め、力を込めた拳を。

「せやあっ!」

頭上の、3メートルはあろうかという木の枝に叩き付ける。

その威力で太い枝はへし折れ、宙を回転しながら地面に落ちた。

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